
「最近の後輩、なんか受け身だよね」
「自分から考える姿勢がほしいんだけど…こっちが先回りしてばっかりで」
そんな声を、社内で聞くことが増えてきました。
たしかに、目の前の業務に手一杯で、後輩が自分から考えて動くっていうのは、なかなか難しいことかもしれません。
でも、ちょっと視点を変えると――
「考えるきっかけが足りてないだけかもしれない」と思うんです。
育成のスタートラインに「問い」を置く
私たちはつい、「ちゃんと教えてあげなきゃ」と思って、先回りして答えを提示してしまいがちです。もちろん、悪気なんてない。むしろ親切心からの行動です。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
後輩にとって、考える前に答えが出てくる環境って、どう映っているでしょうか?
「考える余白」がないまま仕事をこなすようになってしまうと、「言われたことをやる人」にはなれても、「自分で判断する人」にはなりにくいんです。
KPTAで、自分の言葉でふりかえる力を育てる
マナビノシクミでは、育成の中に「問い」を差し込むとき、KPTA(Keep/Problem/Try/Action)という指向フレームワークをよく使います。
これは、行動をふりかえり、次の一歩を自分で考えるシンプルな枠組みです。
- Keep:よかったこと、続けたいことは?
- Problem:どこに困難や課題があった?
- Try:次に試してみたいことは?
- Action:それを、いつ・どうやってやる?
この流れをベースに問いを投げると、育成対象者は「ふりかえる → 気づく → 自分で決める」というサイクルを自分で回せるようになっていきます。
事例:問いがあるだけで、若手の顔つきが変わった
ある営業チームでは、毎週月曜の朝に「KPTAふりかえり共有」を5分だけ行うようになりました。
最初は戸惑っていた若手メンバーたちも、回を重ねるうちに、
- Keep:前回よりも早く提案書を出せた
- Problem:先方に刺さる提案の言葉選びに悩んだ
- Try:先輩の過去資料をストック化してみる
- Action:今週の提案書をつくる前に、ストック化してみる
といった具合に、自分の言葉で行動をふりかえる力が育っていきました。とくに、自分たちができるようになっていることに目を向けるようになりました。
問いは、すぐに効果が出る「魔法」ではない
もちろん、問いを投げたからといって、すぐに全員が考え始めるわけではありません。
でも、問いにはちゃんと「種をまく力」があります。すぐに芽が出ることもあれば、数週間、数ヶ月かかることもある。でもその問いは、確実にどこかで本人の中に根を張っていきます。育成において問いを大切にするのは、短期的な成果を求めるのではなく、「考え続ける力」を育てることだと考えます。
次回予告:「育つ場」は、日常に織り込める
第3回では、「問い」が芽を出すために欠かせないもうひとつの要素――
「場」のデザインについてお話しします。
- 忙しい職場でもできる「育つ場」って?
- 「場」を少し工夫するだけで、空気感が変わる?
- 現場で実際に行われた取り組みのリアルな事例もご紹介します。