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第4回 | 教えることは、自分の「学び直し」である | 学びが広がる組織のつくり方 ─ マナビノシクミ物語 ─

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「マナビノシクミ」は、人に教えるプロセスそのものが、自分自身の理解を深める機会であることを強調します。私たちは、誰かに何かを教えようとするとき、自分の知識を再構築し、より深く掘り下げることになります。

言葉を選び、相手の理解度に合わせて説明を調整する中で、自分は何を知っているのか/知らないのか、自分の知識に抜け漏れがないか、論理的に破綻していないか、などを確認することになります。このプロセスは、自分の学びを再確認し、より強固なものにするための強力な手段なのです。教えることは、他人に知識を渡すことだけではなく、自分自身の「学び直し」なのです。

事例:前回、KPTAで自分のノウハウを整理したユウキ。今回は、いよいよそれを同僚に伝えるという最初の挑戦に臨みます。人前で話すことが苦手な彼が、この挑戦で学んだこととは何だったのでしょうか。

KPTAで整理したノウハウを元に、ユウキは初めて同僚に「教える」ことに挑戦しました。マニュアルを片手に、ツールの使い方を説明します。しかし、同僚からは「このボタンを押すとどうなるの?」「なんでこの手順が必要なの?」といった質問が次々と飛び出しました。

最初はうまく答えられず、もどかしさを感じました。しかし、彼らの反応を観察しながら、言葉を選び直し、より平易な言葉で説明を試みました。すると、徐々に相手の顔が「なるほど!」という表情に変わっていくのを見て、ユウキは大きな喜びを感じました。

この経験を通じて、彼は気づきました。人前で流暢に話すことだけがコミュニケーションではない。自分の知識を誰かに伝えようとすることで、これまで当たり前だと思っていたことが、実はそうではなかったと発見できたのです。そして、教えるという行為が、こんなにも自分の成長につながるなんて、と彼は感動しました。教えることへの不安は、次第に「もっとうまく教えたい」という意欲に変わっていきました。

次回:第5回『個人の成長が、組織全体の自律的な変化を促す』に続く