
「マナビノシクミ」の核心は、「ふりかえり」という手法です。私たちは日々の業務の中で多くの経験を積みますが、それを意識的に言語化し、整理しなければ、単なる「やったこと」で終わってしまいます。
特にKPTA(Keep, Problem, Try, Action)フレームワークを用いることで、漠然とした経験を具体的な学びとして言語化し、体系的に整理することができます。このプロセスは、人に教えるための最初の、そして最も重要なステップです。自分の経験を客観的に見つめ直すことで、自分自身も新たな気づきを得ることができます。
事例:前回、上司の決断により「マナビノシクミ」の研修を受けることになったユウキ。内向的でうまく話せない彼が、経験を知識に変えるための具体的な方法とは何だったのでしょうか。
ユウキは、「マナビノシクミ」の研修でKPTAフレームワークを学びました。ファシリテーターの指導のもと、彼はこれまでのDX活動をふりかえるワークに取り組みました。
「うまくいっって今後も続けたいこと(Keep)を書き出してください」
ユウキは、自分が開発したツールのこと、それによってチームの作業時間が半分になったこと、そして同僚が喜んでくれたことなどを書き出しました。次に、「不満/不安に感じていること(Problem)」を整理しました。
「ツール開発に時間がかかりすぎた」「他の人に教えるのが難しかった」「バグが出たときの対処法がわからなかった」
そして、「次に試したいこと(Try)」として、同僚が自分でツールをカスタマイズできるように、簡単なマニュアルを作成することを思いつきました。最後に、「具体的な行動(Action)」として、「来週中にマニュアルのドラフトを作成する」という具体的な目標を設定しました。
このワークを通じて、感覚的に行っていた作業が、驚くほど明確なノウハウとして整理されていくのを感じました。これまで頭の中にぼんやりとあったノウハウが、まるで地図のように整理されていく感覚は、ユウキにとって新鮮な驚きでした。彼はこの時、言葉にできないという自分のコンプレックスが、少しずつ和らいでいくのを感じていました。
次回:第4回『教えることは、自分の「学び直し」である』に続く