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第1回 | DXの成果を、組織全体の力に変える | 学びが広がる組織のつくり方 ─ マナビノシクミ物語 ─

· 人材育成
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私たちの周りでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が日常的に聞かれるようになりました。しかし、DXの真の目的は、単に新しいツールを導入することだけではありません。個々の社員が獲得した新しいスキルや成功体験を、組織全体の財産として共有し、全員の力に変えることも大切な要素です。

「マナビノシクミ」とは、まさにその目的を達成するためのフレームワークです。個人の経験から得られた暗黙知を、誰もが理解し、活用できる形式知へと変換します。そして、組織全体に広がる自律的な成長の文化を育むことを目的としています。この連載では、一人の若手社員の物語を通して、この仕組みがどのように組織に変化をもたらすのかを具体的に見ていきましょう。

事例:ユウキは、入社3年目の若手社員です。彼は内向的な性格で、自分から積極的に話しかけるのは苦手です。朝礼での一言スピーチも、顔がこわばってしまい、どうにもうまく話せません。そんな彼が、業務で行っている作業を自動化するツールを独学で開発しました。そのツールは瞬く間にチーム内で評判となり、他のメンバーも同じように業務効率が改善されました。

「ユウキさん、どうやったんですか?」

同僚からの質問は嬉しかったものの、どう答えればいいか分かりませんでした。口ごもりながら、「えっと…このボタンを押して、このスクリプトを動かすだけで……」と断片的に話すのが精一杯でした。彼の話は要領を得ず、なかなか相手には伝わりません。

ユウキ自身も、自分のノウハウを論理的に説明することが難しいと感じていました。彼の貴重な経験が、彼一人の才能で終わってしまうことに、彼は焦りを感じていました。DXの小さな成功は収められたものの、その先にある「広げる」という大きな壁にユウキは直面していたのです。

次回:第2回『育成は「センス」ではなく「仕組み」である』に続く